イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
お世辞はいいと言ったのに、なぜか力いっぱい反論されてしまった。
自分の容姿のことを口にすると、生んでくれた両親が悲しむのではないかと思っていた遠子だが、実際両親は、遠子のことをお姫様のように「かわいい、かわいい」と育ててくれた。
それが愛情だと思っていた遠子は、赤の他人のタンバの言葉に少し戸惑ってしまった。
「――うちの両親みたいなこと言うのね……」
もちろん、今までも、遠子にこう言ってくる男性はたまにいた。
だが遠子はそういうお世辞を、「人間関係をよくするただのお世辞」としか思っておらず、本気にしたことは一度もなかったのだが、通りすがりのタンバに言われると、ちょっとモゾモゾする。
「いやいや、俺はご家族じゃないっすけど、声を大にして言います! お姉さんちょータイプですっ! リサちゃんが俺の心の中にいなければ、ダメで元々、頑張って連絡先聞いてますっ!」
「いやいや、リサちゃんのほうをがんばらないと」
「ああーっ、そうだった!」
頭を抱えて座り込むタンバを見て、遠子は爆笑しながら、バシバシと背中を叩く。
見ず知らずの男子からかわいいと言ってもらえて、遠子はなんだか落ち着かない気分になってしまったので、若干照れ隠しもあった。
「大事なことほど、大事なひとには言えないのかもしれないね」
「そうっすね……お姉さんが可愛いのはマジですけど……はぁ、リサちゃん……」