イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
(私はチョコレートで、直倫はバニラ……)
ソフトクリームを両手に持って、遠子は慎重にもとにいたベンチに戻る。
だがそこに直倫の姿はなかった。
「直倫……?」
両手にソフトクリームを持っているので、電話を掛けることもできない。
「もしかしてトイレに行ったのかな」
遠子は周囲をぐるっと見回す。
周囲には家族連れやカップルが多いので、このまま見つからないのではと少し焦ったが、背の高い直倫の姿は目立っていて、すぐに発見できた。
そう遠くに行ってはいなかったようだ。
ベンチを背にした大きな花壇の向こうに立って電話で話している。
(よかった、すぐそこにいた)
彼の背中に向かって歩き始めると、
「――だから、そうじゃなくて……」
電話中の声が聞こえた。
さらに直倫は遠子に背中を向けたまま、ため息をついている。
あまり楽しい雰囲気ではないらしい。
(仕事の電話かな……?)
声を掛けるタイミングを失って立ち尽くしていると、
「……ただの幼馴染……いや……そうだ。だから……関係ない。これは俺とあなたのふたりの問題だろう。他人を巻き込むな」