イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「えーっ、私は汚れてもいいってわけ?」
「だってお前、存在自体が菓子みたいなもんだろ。少々まみれたところで、違和感がない」
「なにそれ」
「だからさ」
直倫はククッと笑うと、そのままソフトクリームをなめとるように見せかけて、遠子の手の甲に軽くキスをする。
「ひゃっ!?」
「――甘い。かじりたくなる」
そのまま切れ長の目を輝かせながら、直倫はじっと遠子を見つめる。
「もうっ……意味わかんない」
ほんの一瞬のことで、周囲の客にも別に見られてはいないだろうが、さすがに恥ずかしい。
(やっぱり直倫は直倫だ)
遠子は顔を真っ赤にしながらバニラを押し付け、そのまま自分のチョコレートに集中することにした。
そのあと、お昼前後に感じたおかしな空気はまったくなくなっていた。
なにがあったのかはわからないが、遠子と同じように、直倫も気持ちを切り替えたのかもしれない。
「やっぱり最後は観覧車がいいな」
遠子はワクワクしながら、直倫と手を繋いだまま、一周まわるのに十分かかるという観覧車に乗り込んだ。