イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
気が付けば時間は夜の七時を過ぎようとしている。
遠子はうっとりしながら、うっすらと空の端が薄紫色に変わっていく様子を眺めていた。
「トーコ」
「ん?」
遠子は外の景色から目を離さないまま、ふんわりとした返事をかえす。
ここからてっぺんを回る。一番眺めがいいはずだ。
「トーコ」
すると今度は少しだけ、焦れたような声で名前を呼ばれて、繋いだ手を引かれる。
「なに?」
ちらりと向かいに座っている直倫に目を向けると、
「お前、外ばっかり見てるなよ」
と、不服そうな直倫にため息をつかれてしまった。
「いや、観覧車なんだから景色を見るでしょ」
「景色より俺に構えよ」
「なんなの、急に。子供みたい」
突然のわがままに、遠子は思わず笑ってしまったのだが――
「デートで遊園地とかいうくせに、そういうところは頭が回らないんだな」
直倫は腰を浮かせて、座った遠子に、上から覆いかぶさるようにキスをした。
「……っ!」
そもそも、膝がくっつきそうなくらいコンパクトな観覧車だ。
長身の直倫が腰を浮かせるだけで、頭を打ちそうになる。