イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

意地悪なことを言うけれど、面倒見がよくて、優しいところもあって、気遣いもできて。
そしてドキドキさせるようなことばかり言って……。

なにより一緒にいて、すごく気持ちが落ち着く。
それは気が楽とか、気遣いが無用だとか、そういうわけではなく、もっと穏やかなものだ。


(自分を偽らなくていい……誤魔化したり、無理に笑ったり、必死にならなくてもいい……)


「直倫、どう思う? いきなりこんなこと言われたら困る?」


なにより自分が一番驚いているのだ。

直倫だっていきなりだろう。だから困るに違いないと思ったのだが――。

その瞬間、直倫もまた大きく目を見開いていて。
どこか苦しそうに、唇を震わせる。


「――くそっ……」

 
そしてなぜか悪態をついたあと、次の瞬間、直倫は乱暴に遠子を抱きしめていた。


「お前、そういうところがずるいんだよ……」


それは、まるで身も心も振り絞るような声で、切なくて――。
泣いているわけでもないのに、泣いているようにも聞こえて……。

思わず遠子は、応えるように、直倫の背中に腕を回していた。


「ずるい……?」
「負けてるってことだ」
「直倫が、私に?」
「ああ、そうだよ……。ほんと、可愛すぎて、降参したくなる……まいるよ」


直倫の声が、腕が、遠子の心と体をきつく抱きしめた。


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