イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

(いっつも私がいじめられてるもんね……たまにはいじめてあげよう)


遠子はニヤニヤしながら、言葉を続けた。


「なんだっけ~。うさぎのぬいぐるみだよね。耳が長いの。木のボタンがついた、緑色のベスト着てる、うさぎのぬいぐるみ」
「お前、そんなどうでもいいこと、よく覚えてるな……」


呆れたような声からして、やはり遠子の昔の記憶は正しかったようだ。


「急に思い出したの。直倫って私のことぬいぐるみだと思ってるんじゃない?」


遠子はクスクスと笑いながら、自分のウエストに回った直倫の手の甲をぺちぺちと叩く。


「私のこと、抱きしめられないと眠れないの? 甘えん坊さんだね~」


(私ばっかり恥ずかしがってるんだから、直倫も思い知るがいい! ワーハッハッハ!)


心の中で高笑いしつつ、直倫をからかっていると――。

「そうかもしれないな」

ドキッとするほど甘く、低い声が耳元で響いた。


(えっ……!?)


「子供の頃からずっと、こうしたかったし……」


変わった声色になにかを感じて振り返ろうとしたその時、遠子の体はグイッと引き寄せられ、直倫に組み敷かれていた。

薄暗いベッドルームで見上げる直倫の顔は、端整であるからして怒るとちょっと冷たそうに見えるのだ。


< 144 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop