イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
(いっつも私がいじめられてるもんね……たまにはいじめてあげよう)
遠子はニヤニヤしながら、言葉を続けた。
「なんだっけ~。うさぎのぬいぐるみだよね。耳が長いの。木のボタンがついた、緑色のベスト着てる、うさぎのぬいぐるみ」
「お前、そんなどうでもいいこと、よく覚えてるな……」
呆れたような声からして、やはり遠子の昔の記憶は正しかったようだ。
「急に思い出したの。直倫って私のことぬいぐるみだと思ってるんじゃない?」
遠子はクスクスと笑いながら、自分のウエストに回った直倫の手の甲をぺちぺちと叩く。
「私のこと、抱きしめられないと眠れないの? 甘えん坊さんだね~」
(私ばっかり恥ずかしがってるんだから、直倫も思い知るがいい! ワーハッハッハ!)
心の中で高笑いしつつ、直倫をからかっていると――。
「そうかもしれないな」
ドキッとするほど甘く、低い声が耳元で響いた。
(えっ……!?)
「子供の頃からずっと、こうしたかったし……」
変わった声色になにかを感じて振り返ろうとしたその時、遠子の体はグイッと引き寄せられ、直倫に組み敷かれていた。
薄暗いベッドルームで見上げる直倫の顔は、端整であるからして怒るとちょっと冷たそうに見えるのだ。