イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
けれどなぜか、直倫のほうがつらそうにも見える。
「ナオ……」
気が付けば、子供の頃のように直倫の名前を呼んでいた。
「お前、ここでナオって呼ぶのかよ……」
ゆっくりと息を吐いて、直倫はそのまま遠子の首の後ろに腕を回し、ほんの少し持ち上げる。
見下ろされているわけでもなく、対等な目線の位置だ。
「――我慢してるの?」
遠子はおそるおそる尋ねる。
行為は当然初めてだが、女子高育ちの遠子は、実体験とは関係なく、知識だけは豊富だった。
早熟なクラスメイトの話を聞いて、わーきゃーと盛り上がったことは多々ある。
覚悟して問いかけた遠子だが、直倫の返事はあっさりしたものだった。
「してない」
「……そうなの? その……えっと……なんていうか、その、男の人は……大変なんだって、聞いたことあったから……」
「ああ……そういう意味か」
直倫はふっと笑って、そのままぺろりと遠子の首筋をなめる。
「今までの我慢に比べたら、ここで出すとか出さないとかどうでもいい……」
“出す”とか“出さない”という直接的な単語に、遠子の頬はカッと熱くなる。
「そっ……そっか……」
「それより、俺にもう抱かれたくなるほうがずっと困る……だから大事にする……無理はしない」
首筋にキスをして、そして遠子の耳を唇でくわえる。
「トーコは俺に、毎晩ぐずぐずに愛される覚悟だけしていればいい……」
注ぎ込まれる言葉はまるで愛の戒めのようで――。
遠子は甘い予感に身も心も震わせながら、「うん……」と小さくうなずいたのだった。