イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
(ていうか、仕事も恋も順調なんて、私の人生ピークなんでは?)
ピークのあとは、落ちていくだけだ。
こんなふうに幸せを感じておいて、転落するなんて恐ろしすぎる。
しかも遠子にとって遅すぎる春だ。
失う恐ろしさを思うだけで、血の気が引いた。
(どうしよう……)
「おい、なにニヤニヤしたり落ち込んだりしてるんだ」
箸を持ったままウフフと笑ったり、泣きそうになっている遠子を見て、直倫が怪訝そうな表情になる。
「ごめん……もしかしたらこれが私の人生のピークかと思ったら、急に怖くなっちゃって」
箸を置き、正直に答えると、直倫がふっと鼻で笑った。
完全に馬鹿にしている表情だ。
「――笑わないでよ。私だって真剣なんだから」
「俺だって真剣だ。だから今度こそ失わないように、努力し続ける。だからお前ひとりの問題じゃない」
「あ、そっか……うん、そうだね」
ふたりの関係はふたりで作るもの。どちらか一方だけの努力の問題ではないという直倫の言葉に、遠子はうなずいた。
(だけど……今度こそ?)
いったいなんのことだろう。
まるで一度失敗したかのようなセリフではないか。