イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「――直倫さんっ、こっちです~!」
(へーっ、ナオミチ……おんなじ名前だ……)
突然遠くから聞こえた甘えた声に、遠子は何気なく視線をそちらに向ける。
だがそのあとに聞こえた声に、ハッとした。
「松野(まつの)、大きな声を出すな」
そう、それは直倫だった。
スーツ姿の直倫が、女性と一緒にいる。
(えっ、うそっ、えっ!?)
遠子は慌てたが、ちょうどソファースペースには大きな観葉植物が並べてあって、向こうには遠子の存在には気づかれていないようだ。
遠子は膝に乗せていた帽子を手に持って顔を隠しつつ、ふたりの様子をうかがった。
「あと、俺を名前で呼ぶな」
「はーい。そうですね、公私混同ですもんね」
「そうじゃなくてだな……」
直倫はハァ、とため息をつきながら、キラキラした目で自分を見つめる女性を見下ろす。
(あ……あの子! ランチの時に声を掛けてきた子だ!)
そう、直倫と一緒にいるのは、直倫とふたりでランチに出た際に、トイレで遠子に直倫との関係をわざわざ尋ねてきた女性だった。
(松野さんっていうんだ……いや、でもなんでふたりが一緒に?)