イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「騒ぐならもう連れてこない」
「えーっ、槇さんがそれを言いますか~」
あきれ顔の直倫に対して、松野はウフフと笑って、首をかしげる。
「私のこと、そばにおいてくれたのは槇さんなのに。これって特別ってことでしょ?」
(えっ……どっ、どういうこと……?)
直倫が彼女を自分のそばにおいたというのはどういうことなのか。
そんなに親しい間柄ということなのだろうか。
頭が完全に混乱している。
「俺はただのお目付け役だ」
直倫はそう言って、腕時計に目を落とす。
「そろそろ時間じゃないか?」
「はい、そうですね。パパも槇さんに会えるのを、首を長くして待ってます。すごーく楽しみにしてますっ! 案内しますねっ、行きましょうっ!」
そして松野は直倫の腕にしがみつくと、そのまま跳ねるようにバックヤードのほうに直倫を連れて行ってしまった。
一方取り残された遠子は、呆然とふたりの背中を見送るしかない。
(ちょっと待って、落ち着いて……ちゃんと考えよう)