イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
自分はそもそも直倫に不似合いなのではないかとか、幼馴染でなかったら、きっと口も聞いてもらえなかったに違いないのに、幼馴染というだけで優しくされて、彼と結婚するようなことになっていいのだろうかとか――そんなネガティブな感情が渦巻きはじめる。
結局遠子はなにも言えないまま、出勤していく直倫を見送ることしかできなかった。
「はぁ……ヘタレすぎる……どうしたらいいの……」
ソファに身を投げ出して、遠子はうめく。
直倫の気持ちを疑っているわけではない。
自分が愛される価値があるとどうしても思えなくて、全ての可能性に、臆病になっているだけ。
(あの電話のことだって、松野さんのことだって、直倫にちゃんと聞けばいい話だし……聞いてもし怖いことになったらどうしようって、聞けないのは私だし……ああ~これが点数として目に見える試験なら、努力の方向もわかるのにな……)
結局自分の心の問題なのだ。
「……んあーーーっ! どうしていいかわからないじゃないっつーの……!」
しばらくソファーに倒れこんでいた遠子は、突然叫んで、ソファーの上に飛び起きた。
「無理っ! 考え込むの性に合わないっ!! もう、今日直倫に聞いてみよう、そうしよう!」
きちんとこの問題に向き合わなければ、今後もずっと似たようなことが起こって、ひとりでうじうじと悩むような気がした。それでは何の進歩もない。
(ちゃんと向き合う……)
直倫とこれからも一緒にいたいという気持ちはゆるぎないのだから――。