イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「そろそろ金木さん戻ってくるかなぁ~」
戻ってきたら、遠子のアルバイトもあがりだ。
腕時計に目を落としていると、
「すみません」
と女性に声をかけられた。お客様だ。
「はいっ、すみません」
慌てて顔を上げた遠子だが――。
「あ」
遠子は石のように硬直して、動けなくなった。
なんと料理の向こうに立っていたのは、松野だったのだ。
まさかここで彼女に会うと思っていなかった遠子は言葉を失う。
(えっ、なんで?)
「あ、えっと……」
一瞬どう反応をかえしていいかわからず、松野を見つめたが、彼女はどこか挑むような瞳で店内を見回した後、
「ここで働いてたんですね~」
と微笑む。
その笑顔に違和感を覚えつつも、遠子はうなずく。
「あ……はい」
(落ち着け~落ち着け~。確かにいきなりだけど、たまたまかもしれないし!)
何度も自分に言い聞かせはしたが、ドキドキと心臓が跳ねて口から飛び出しそうだ。