イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
そう、そうなのだ。
直倫はなんでも簡単にやってしまうように見えて、本当は努力家だ。
幼いころはそれがわからず勝手に対抗心を燃やしていたが、ピアノの連弾だってなんだって、人前で努力している姿を見せないだけで、コツコツ、一歩ずつ成果を積み上げる男なのだ。
それは今でも同じことで、デザインの勉強をしているという直倫の本棚は、世界中の植物図鑑や、デザイン画集、写真集でいっぱいなのだから。
お金で解決すると言われて、直倫が受けるはずがない。
すると麻衣は、眼鏡にすっぴんの遠子を指さして、叫ぶ。
「あんたみたいに女放棄してるブスにわかってるようなこと言われたくないわよっ! おとなしく身を引いてよっ、ブスッ!」
「っ……」
さすがに面と向かって女を放棄しているブスと言われたら凹む。
あやうくトラウマを刺激されて、涙腺が緩む。
(ブスブスって……言いたい放題っ!)
だが黙って泣き寝入りするつもりはもうなかった。
まっすぐな思いを向けてくれる直倫に、そして彼を好きだと思う自分からも、逃げたくない。
(直倫……力を貸して)
遠子はグッと唇をかみしめた後、首から下がっているペンダントを握りしめていた。