イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
おまけに麻衣の手が遠子の首にかかって、ガリッと爪でひっかかれてしまった。びりっと痛みが走ったが、麻衣はやめない。
なおも彼女が遠子の首元をつかもうとしているのに気づいて、ハッとした。
「やめてっ、麻衣さんっ!」
「あんたにはもったいないっ!」
「やめてったら!」
彼女は遠子のペンダントを奪おうととしているのだ。
直倫がこれを作っていたことを、麻衣は知っているのだ。
大切なものだから、奪おうとしている。
遠子にとってこれは、目に見える直倫の思い、そのものなのに。
「いやっ、離してっ!」
遠子は身をよじりながら、叫んでいた。
自分の身よりも今はペンダントが大事だった。
絶対に離さないと身を縮めると、麻衣が手のひらで遠子の顔を叩き始める。
「あんたなんかにっ、あんたなんかにーっ!」
そう叫ぶ麻衣の顔は、涙でボロボロで――。
遠子は自分が乱暴を受けているのに、辛そうな麻衣の表情に胸が詰まりながら、頭がぼうっとし始める。
「だれかーっ! けーさつ呼んでーッ!」
金木の絶叫が周囲に響き渡り、何事かと集まってきた野次馬がどんどん増えてくるのにつれて、ゆっくりと――意識を失っていったのだった。