イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
俺と、結婚してください。
「いやー、びっくりしちゃった……はは~」
遠子は病院の個室のベッドでアハハと笑いながら、ベッドのわきに座る、目を真っ赤にした両親に笑いかけていた。
時間はすでに夜の八時を回っているが、昨日、知り合いの病院に担ぎ込まれてから目を覚ました翌日の今日は、一日かけて、MRIだなんだと検査の連続だった。
「びっくりしたじゃないわよ、もうっ……」
いつだって美しい亜子の髪は乱れ、顔も真っ青だ。昨晩から眠っていないらしい。ハンカチを握りしめる手は真っ白で、よっぽど心配させたのだろうと、申し訳なくなってくる。
それは和美も同じで、
「そうだよ、遠子。パパ、倒れるかと思ったよ……ううっ……」
ハンカチで涙をふきながら、ベッドに横たわる遠子の手を両手で包み込むようにして握っていた。
特等室の病室は、豪華ではあるが、まるでお通夜のような雰囲気だ。
こんなことになると思っていなかった遠子は、違う意味で冷汗がとまらない。
「いやいや、ごめん……でもたんこぶと打ち身だけで、なんともないからさ……」
そう、あの後遠子は病院に担ぎ込まれたが、突き飛ばされたときに激しく打ち付けたのは背中だけで、頭のほうは大したこともなく、丸一日かけてやった精密検査の結果も、おそらく問題ないだろうと言うことだった。