イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
大事に思っているのに大事にできなくて、傷つけてばかりで。
そして自分にとって大事じゃないものですら、誰かの大事なものだと思うと、強く切り捨てられない、優しい男で……。
だから遠子も直倫と一緒にいることを選んだとわかっている。
「――ああ」
そして直倫も、己の甘さがまわりまわって遠子を傷つけることになったのを身に染みて悔やんでいた。
いつも反発しているが、兄の言葉は当然だと思う。
直倫は白臣の反対側に回り込み、眠る遠子を見つめたあと、手をぎゅっと握りしめて祈るようにひざまずいた。
「トーコ……」
――・・・
遠子は夢を見ていた。
ここにはいないはずの直倫が、側にいて――
しっかりと遠子の手を握ってくれている。
「ナオ……」
遠子は彼の名前を呼んだ。
「トーコ」
応えるように、握られた手に力がこもる。