イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
その瞬間、無性に遠子が愛おしくなった。
直倫はそのままぎゅっと遠子を抱きしめ、首筋に顔をうずめていた。
「トーコ」
「ん?」
「俺、お前に昔、呪いをかけただろ……」
「――呪い?」
物騒な単語を聞いたせいか、遠子は驚いたように身じろぎした。
だが直倫は遠子を後ろから抱きしめたまま、振り返るのを停めて、言葉を続ける。
「子供のお前に、ブスって言った……」
確かにあれは呪いだった。
遠子の人生を変えてしまうほどの意味があった。
「本当に、ごめん……お前は今も昔も全然ブスじゃない。可愛いし、綺麗だし、頭もいいし、努力家だし、俺にはもったいないくらいいい女だ」
「直倫」
「俺は……」
「ナーオ」
少し困ったように、遠子が直倫の言葉を遮る。
「確かにあれは呪いだったのかもしれないけど……でもそれは私にだけじゃなくて、直倫もだったんだね」
「え?」
「私にブスって呪いをかけたから、直倫も呪われたの」
「どういうことだ」
遠子の言葉の意味がわからない。
「だからね、その後の人生、ずっと私のことばっかり考えるようになったじゃない……」