イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
出来すぎると思われているがゆえに、余計動けなくなる。
白臣は軽くため息をついた後、カウンターから振り返って始の姿を探していた。
「ん、呼んだ?」
「わあっ……!」
振り返った反対側から、始がにゅっと顔を覗き込んできた。
自分らしからぬ動揺だったが、この人の前だと白臣も取り繕う暇がない。
(なんなんだこの人は本当に!)
白臣は内心ひどく焦りながらも、慌てて首を振った。
「呼んでもないのにそうやって察知してくるから、あなたは怖いんですよ」
「まぁ、近づかないでと言われたけれど、近づいたほうがいいような気がしただけで……」
始は目を細めて、にっこりと笑う。
相手が男だろうが女だろうが、万事がこの調子で懐に入っていく山邑始という男に、白臣はいつも圧倒されてしまう。
「――始さんは、どうしてそんなにフットワークが軽いんですか?」
「自分の直感だけで生きてるからかな」
「野生児か!」
すると始はアハハ、と軽やかに笑いながら、白臣の隣に腰を下ろす。