イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
お兄ちゃんの策略
翌朝、遠子は久しぶりに朝から家族と顔を合わせた。
昨日はなんだかんだと疲れたこともあり、ごく自然な空腹で目が覚めたのだ。
「ママ、おはよう」
「あら、遠子。おはよう」
すでに母は食事を終えてコーヒーを飲んでいるところだった。
キッチンの広いダイニングテーブルで新聞を読んでいる亜子に挨拶をすると、キッチンで朝ご飯を作っていた和美が目を丸くした。
「遠子~今日は早いねえ」
「パパもおはよう」
「うん、おはよう。えーっと、なにか食べるかな? 甘いフレンチトースト作ってあげようか」
「食べる」
うなずきつつ、亜子とテーブルを挟んで腰を下ろす。
キッチンではパンをレンジでチンする音と、それから卵を割る音がする。
昔から久我山家では食事は父親である和美の担当だ。
「ママ、昨日のことなんだけど」
「私も本当は一緒に話をするつもりだったんだけど、ごめんなさいね、急にどうしても本社に行かなくちゃならなくなって」
彼女は素材からこだわりぬいた丁寧な仕事で、セレブ層に人気のあるベビー・子供服メーカーをメインに扱うアパレルメーカーの社長で、デザイナーでもある。