イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

遠子の五つ年上で、同じ大学出身であり、投資銀行部門のヴァイス・プレジデントだ。
日本でヴァイス・プレジデントといえば副社長だが、外資では課長クラスといったところだろうか。
インセンティブ給込みで年収三千万、その優秀さを見込まれて、近いうちにニューヨーク本社に栄転になるのではと、まことしやかに噂されていたのだった。

その噂話を聞いた時、遠子は彼に長年の思いを告げようかと考えたのだが――。

脳内に、ふと小学生の時に言われた幼馴染の言葉がよみがえった。


「お前、ブスだから眼鏡外すな」


小学生だった自分と、中学生だった彼の、本当に些細な会話の中の一言だった。

そう……中学生になったらコンタクトにしようか迷っているとか、そんな会話の中で――。

一緒にいたもう一人の幼馴染は、「そんなことはない」と否定してくれたのだけれど、それまで両親に愛されてのびのび育ってきた遠子は、容姿の良しあしで人に好かれたり嫌われたりするのかと、衝撃を受けたのだ。


発言した悪魔のような幼馴染は、そんなことを忘れているに違いないが、幼馴染のその言葉は遠子に消えない傷を残した。
幼馴染が属する男全体を苦手とするようになり、ひたすら勉学の道に励む努力家になった。


そして気が付けば、遠子は社会人になっても男性とまともに付き合ったことがない、アラサー女子になってしまった。


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