イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
そんな遠子が淡い恋心を抱いたのが高島で、彼は入社後のニューヨーク研修で遠子の世話役になってからずっと、一番の先輩だった。
アメフト部出身のがっしりとした長身に、少したれ目の茶色い目。さっぱりとした黒髪のベリーショート。柔和な笑顔。
外資と言えば周囲はみんなライバルと思われがちだが、高島はチームとして成功することを考え、後輩の面倒を見ることを全く厭わない男だった。
そんな高島と共にに働くようになって、六年間。
遠子なりに、ゆっくりと大きくなっていく彼への思いを温めていたのだが――。
(でも、告白しないでよかったんだよね……)
遠子はブーケを抱えたまま、ニコニコと笑っている高島と、その妻を見つめる。
妻になった人は高島の大学時代の後輩で、もう三年も付き合っている女性らしい。
激務の高島を支え続けた女性だ。高島が選ぶだけの女性なのだ。素敵な人に決まっている。
そして数か月後、ふたりはニューヨークに行く。
(仕事しか能がない私が告白しちゃいけない相手だった……)
その仕事ですら、体を壊し、リタイアしてしまったのだから、今の自分は何もないと言っていいだろう。