イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

「久我山」


高島が長身を折るようにして顔を覗き込んでくる。


「はい」


もしかしたらこれが最後の会話になるかもしれない。

泣きそうになるのを必死にこらえて、遠子は顔を上げた。


「お前は本当に努力家だ」
「……」
「でも少し頑張りすぎるところがあるから、無理をするな」
「……っ」
「きっとお前の輝ける場所があるよ」
「は、はいっ……ありがとうございますっ……高島さんも、おっ、お元気でっ……!」


涙がぶわっと噴き出した。

もう駄目だった。
やっぱり泣いてしまった。

切なくて苦しくて、この人を好きでいてよかったと思いながらも、好きだと言えなかった後悔がごちゃまぜになって襲ってくる。

だがおめでたい席で泣いてばかりは駄目だ。
遠子は精いっぱい笑顔を浮かべて、高島の門出を見送ったのだった。


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