イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
とりあえず出ると、
《今どこにいるんだよ》
という、不機嫌そうな男の声。
「はい? どちら様ですか」
間違い電話かなとのんきに考えると、
《婚約者の声も忘れたのか? 薄情な女だな》
その、呆れたような声に頭が覚醒した。
「えっ、直倫!?」
遠子はアワアワとなりながら、声を押さえてささやく。
「関係ないでしょ。私がどこでお酒飲んだってっ……」
《おいおい、酒かよ》
「あ……」
つい本当のことを口にしてしまった。
だがしかし自分は二十八歳の立派な大人である。
外で美味しいお酒を飲んだからって責められるいわれはない。
「別に……悪いことしてないし」
《相当飲んでるだろ》
「え?」
《そんな気がする》
(そんな気がするとはなんだ。なぜわかる。お前はエスパーか!)
遠子はそんな言葉を飲み込んで、はっきりと口にした。
「ほっといて」
そして通話を切り、バッグの中にしまい込んだ。