イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「始さんが山岳部出身で手慣れたもんなんだ。バッカスの会だって、元は大学のサークルの延長だったから」
「そうなんですね」
あの山邑始が山岳部出身とは知らなかった。だが自然相手のリゾート開発を手掛ける彼に相応しくもある。
「じゃあ、白臣さんにも伝えたし、連絡先、聞いてもいいかな」
太陽がニコニコ微笑みながら、遠子の顔を覗き込む。
白臣は「連絡先が知りたければ自分を通せばいい」と最初に言った。
それを律儀に守ったのだろう。
(いい人だな~。喜多島さんなら、私と友達になってくれるかな?)
「はい」
遠子はえへへと笑いながら、バッグからいつも持ち歩いている手帳を取り出し、メモ部分に自分の携帯番号を書いて切り取った。
「よろしくお願いします」
「ありがとう。じゃあまた連絡する」
太陽がそのメモを受け取ろうと手を出したその時――
頭上から別の手が伸びてきて、そのメモをつかみ、持ち上げた。