イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
「え……?」
遠子はポカンとしながら顔を上げ、
「なっ……」
息をのみ、そのまま言葉を失った。
なんと遠子と喜多嶋の椅子の後ろに、スーツ姿の直倫が立っていたからだ。
「あれ、ナオ?」
メモを奪われた喜多嶋が、目をパチパチさせる。
どうやら喜多嶋は直倫とも知り合いらしかった。
「太陽さん、すみません。こいつ俺のなんで。直接連絡を取り合うのは勘弁してください」
「えっ、マジで!? ええっ?」
喜多嶋は遠子と直倫の顔をすごい勢いで見比べる。
「そういう関係!?」
「はい」
きっぱりと断言した直倫は、遠子の書いたメモをそのままポケットに入れると、あんぐりと口を開けて振り返ったまま動かない遠子の頬に、指の背を滑らせる。
「やっぱりな」
「……は?」
「体温が低い」
そして直倫は遠子の椅子の横に立つと、そのままひょいっと――遠子をお姫様抱っこで抱き上げてしまった。
「わああっ……!?」
いきなり抱き上げられた遠子は、驚いて直倫の首にしがみつく。
そこで残りの五人も、ようやく直倫に気が付いた。