イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
結婚式を終え、遠子はタクシーを使って自宅に戻る。
披露宴の後の二次会には参加しなかった。さすがに久しぶりに外に出て疲れたのもあるし、これ以上、失恋の痛みで胸が締め付けられるのもつらかった。
瀟洒な高級住宅地の一角に遠子の実家はある。
広い庭と、地下二階、地上三階建ての豪邸の門の前にタクシーがつくのを見張っていたのか、父と飼い犬の“ウニ”が玄関で待っていた。
「ただいま」
「遠子~! ちゃんと帰ってこれてよかったよ~」
「帰れるよ、パパ。子供じゃないんだから」
遠子は苦笑しながら、足元でワンワンと吠えるウニを撫でたあと、父のハグを受け止める。
父は全国にヘアサロンを持つ「KUGAYAMA」グループの社長だ。
遠子を溺愛しており、それを隠そうとしない自称イケてるオジさんの“イケオジ”だが、娘の遠子の目から見ても、五十をいくつか過ぎた父は、実際今でもかなりハンサムである。
すらりと背が高くひきしまった体をしており、髪も黒く白髪一本ない。しわも少なく、若々しい。清潔感があった。
「ママは?」
「仕事があるって出かけて行ったよ」
「そっか……夕方から大変だね」