イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~
ただ、あまりにも子供っぽく、今さら感があったので、てっきり笑われるかと思ったが、
「――そうか」
直倫はふっと表情を緩めうなずくと、突きつけられた遠子の指をつかみ、そのまま自分のほうに引き寄せる。
そして遠子の手の甲の上に、上半身を折るようにして身をかがめ、恭しくキスをしたのだった。
「なーーっ!」
まさにお姫様のように、手の甲にキスをされるとは思わなかった遠子の顔は、真っ赤になってしまった。
「びびびっ、びっくりするでしょっ……!」
「なんだよ。なーって。てか、宣言すればいいのかよ。じゃあ言う。キスするぞ。心の準備できたか?」
直倫は手をつかんだまま、目を細める。
そしてどこか楽しそうに挑発してくるその瞳に、甘く胸がときめき、息が止まりそうになる。
「いや、そうじゃなくて、なおっ、んっ……」
玄関の三和土に立っている直倫はいつもより目線が近く、だからキスもあっという間で。
腰を引き寄せられて、そのままあっさりと唇を奪われる。
そして唇が離れても、名残惜しそうに直倫は遠子を見つめていて、サラサラと直倫の黒髪が頬に触れたままだった。
(くすぐったい……)
キスの名残でぼうっとしたまま、遠子は直倫を見上げる。
「――おやすみ。土曜日に迎えに来る」
「うん……。おやすみなさい……」
そして踵を返し、ドアを押して玄関から出て行く直倫を見送ったのだった。