イジワル御曹司の執着愛~愛されすぎて逃げられません!~

「ねぇ、直倫って大学から一人暮らししてたんだよね」
「うちの両親は十八を過ぎたら家から追い出す方針だったからな」
「だったら、何でもできるの? その、料理とか、洗濯とか」


子供の頃、彼の実家にはお手伝いさんが何人もいて、絵にかいたようなおぼっちゃま生活だったはずだ。


「当たり前だろ。つかお前、俺がイタリアでどんだけ慎ましい暮らししてたのか知らないのかよ」
「正直想像してなかった。メイドさんとかいるところに住んでるのかと……」
「そんなわけないだろ。言っちゃあなんだけど、お前より一人暮らしスキルは高いからな」


直倫はふっと、どこか懐かしそうに微笑む。


(なんだか不思議だな……)


もちろん直倫が、ほかに類を見ない美形であることは間違いないのだが、慎ましい生活を語る彼の姿は、麻のシャツをラフに着こなした、ごく普通の一人の男性に見える。


「私、たいていのことはそれなりにやれると思うけど、気づくことがあったらなんでも言ってね。努力するし」


いくら両親にあれこれ教えてもらったとはいえ、なんだかんだ言って、実家に甘えていたという自覚はある。
一人暮らしの経験がないので、ここは素直に先輩として直倫に教えを乞うつもりだった。

すると直倫は、キリッとした表情の遠子を見て、ふっと表情を緩める。


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