DEAR. -親愛なる君へ-
「お前は?やっぱり親に捨てられたのか?」
フレイズがふたたび、僕の顔をのぞき込んで聞いてきた。
その表情からは、どうしても僕の境遇を聞き出し、自分とどちらが不幸なのかを競いたがっているのがうかがえる。
「……僕は…」
脳内コンピューターで先ほどから検索しているキーワードの答えは出ているのに。
フレイズの質問に答えられないのはなぜだろう。
親、とは。
…子を持つ者のことである。血縁関係が生じる存在。
―――…ああ、そうか。
僕の親が、いないからだ。
だから答えられないんだ。
「……僕は…」
それでも、必死にフレイズの質問に答えようと、他の回答方法を検索していたときだった。
「もうやめて、フレイズ…」
悲しげな声でそう言ってきたのは、リタだった。
リタは僕を背中でかばうように、フレイズと向き合っている。