DEAR. -親愛なる君へ-
博士の髪の毛は灰色で、もうすぐ真っ白になってしまうんじゃないかっていうくらいに弱々しい髪の毛で。
その皮膚は弾力というものを失っており、老人のそれだ。
垂れ下がった目は優しく細められていて、ガラクタを作る際に毎度浴びる黒い煙のせいで、口元のひげは唯一黒かった。
『ディア、お前はもうすぐ、本物の人間になれるんだよ』
そう言って涙を流していた博士の姿を思い出した。
悲しい訳じゃないのに涙を流す理由が、僕にはわからなくて。
…そういえば、博士の行動のひとつひとつが、僕には理解できていなかったなあ…なんて思っていたときだった。
「おい、なんか言ってくれよディア!!」
その声で…涙を流している博士の姿がふっと消え去り、代わりに必死な表情をしているフレイズが目の前に現れた。
さっきまで持っていた木の枝は近くに放り投げられ、僕の両肩をつかんで揺らしているという状況であることに気づくのは、そう時間はかからなかった。
「違うよな!? ジュエルハーツなんかじゃないよな!?」
必死に叫ぶフレイズの瞳は潤んでいて。
きっともうすぐ、瞳いっぱいにたまったそれは、あふれ出て頬を伝い…やがて乾ききった地面へと落ちるんだ。