DEAR. -親愛なる君へ-
…あれは、いつの頃だったろうか。
いつも通りモノド博士と散歩をしていたときだった。
あまり外に出してくれなかった博士との貴重な外での散歩の時間は、僕にとって1つの楽しみとなっていた。
頻繁に外に出してくれなかったのは、あの頃は気にしていなかったけれど…今考えるとこのためだったのかもしれない。
僕の胸に埋め込まれた宝石が…狙われないようにするためだったんだね、博士。
でも、そんなに大切な宝石が取られるのを阻止したかったが為の行為だったなら。
どうして僕の体に埋め込んだの?
…それが、一番効果的だと思ったんですか? 博士…。
―――…いや、今はそんなことを考えるのはやめよう。
目の前で、変わらず大きく手を広げているフレイズの背中を見る僕。
その姿に、小さな彼の背中によく似た、これまた小さな背中を重ねた。
『ディア!! いいから逃げなさい!!』
必死に叫んで、僕のことを追いかけてくる奴らから僕を逃がしてくれた…博士。
今のフレイズのように、大きく手を広げて、まっすぐに前を見据えて、いつもは丸まった背中をぴしっと伸ばして…胸を張って、堂々としていて。
僕の中の宝石を守るためだったなんて、その時はわからなかったけど。
なんとなく、胸のあたりが苦しくて…でも嫌な苦しい、じゃなかったのを覚えている。
フレイズ。
君も、博士と同じように…『コレ』を守ろうとしてくれてるんだね。