DEAR. -親愛なる君へ-
Epilog
「リタ、悪いが薪を少々拾ってきてくれないか」
少し気まずそうにそう声をかけてきたのは、黒く長い綺麗な髪を踊らせるエーヴィンだった。
私はそんな彼女に笑顔を向ける。
「うん、わかった。フレイズたちは?」
「男三人は、まだ川魚を捕まえに言ったっきりだよ」
小さくため息をついた彼女は、本当に綺麗になったなあと思った。
「ふふ、期待してようね」
私はそう声をかけて、薪を拾いに近くの森に向かった。
私たちが暮らす王国ジュエレイドは、貧困の危機を脱し、あるべき姿に戻りつつあると世間では言われている。
ディアがいなくなってから、もう5年の月日が経った。
私たちレヴァは、盗賊名乗ってはいるものの、それなりの年齢でもあるので商売を始めた。
魚を売ったり、綺麗な石を見つけては売ったり。
以前よりも生活は安定しているように思う。
ふと、風が吹いた。
柔らかくて暖かい風。
……もう、春がやってくる。
そう思いながら、風になびいた髪を耳にかけた時だった。