DEAR. -親愛なる君へ-

視線の先に、一人の少年が立っていた。


「……」


距離があって、その少年の表情はかろうじて見える程度だった。

私は、なぜかその少年の姿を、彼に重ねてしまった。

初めて会ったときの彼は、なぜかはわからないけれど……さみしくてかなしくて、とても小さく思えて。
空っぽに見えた。

けれど、その少年は。

彼とは打って変わって、あたたかさに満ちた人間のそれだった。

けれど抱いた違和感は変わらない。


どこか不思議な雰囲気をかもし出している。

彼の姿を重ねてしまったのは、きっと違和感と不思議な雰囲気が同じだったからだろう。


「……あ…」


ふと、目が合った。


彼は、やわらかく……笑ったのだ。


『―――…ありがとう』


それは、彼が最後に口にした言葉。

そのまま、光となって消えてしまった彼。


そのまばゆい光の中で垣間見えた、彼の……ディアの、初めての笑顔。



< 68 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop