夢の言葉と陽だまりの天使(下)【夢の言葉続編③】

「お母さんが、羨ましいな。」

そう呟きながら、私は自分の右手を見つめた。
ヴァロンさんが私を引き止めてくれた時に掴んでくれた、手。
自分の手を包み込んでくれた、あの大きな暖かい手を思い出して私の胸はトクンッと脈を打つ。

私も恋をするなら、あんな人がいい。
あの日からずっとそう思う様になっていた。


「///…私、相当なファザコンだよね。」

自分で自分の頭を軽く叩き、ツッコミを入れながらも、”会いたい”という気持ちは日に日に増していくばかり。
幼い頃から写真を見て、あの人が”父親”だと認識していたのに…。
実物は想像を遥かに超えていた。

思い出すだけで、溶けてしまいそうな気持ち。
それなのに、傍に居たいと思ってしまう。


「……お母さん。
私、自分の気持ちに正直に生きて…いいかな?」

首に掛かっている鍵のアクセサリーが付いたネックレスを握り締めて、私はリディア母さんの墓を見つめた。
< 110 / 290 >

この作品をシェア

pagetop