夢の言葉と陽だまりの天使(下)【夢の言葉続編③】
「……。
実を言うと、あんまり覚えてないんだ。」
「!……え?」
ヴァロンの言葉に私は驚いた。
”覚えてない”…?
すごく小さな頃に別れたのならそれも分かるけど、彼が両親と別れたのは確か7歳の時と聞いた。
7歳といえばもう記憶もしっかりしている筈だし、覚えていないなんて普通はあり得ない。
そんな疑問を感じていた私に、ヴァロンが言葉を続ける。
「俺ね、PTSDなんだ。
心的外傷ストレス障害ってやつ。
強烈なストレスとか、精神的なショックで一部の記憶が無くなっちゃうんだってさ。」
「っ……。」
私の質問に返ってきた予想外の答えに、私は動揺を隠し切れずに言葉を失った。
「全く覚えてない訳じゃ、ないんだけど…。
断片的にしか思い出せないし、両親の顔も…分からない……。」
自分から聞いておいて相槌も打てない私に、ヴァロンはゆっくりと話してくれた。