夢の言葉と陽だまりの天使(下)【夢の言葉続編③】
「…娼婦だった母親に捨てられた。
君達が知ってるヴァロンの過去って、せいぜいその辺りまで…。でしょ?」
とっさに”いつの事を言っている?”と私の脳裏に浮かんだ気持ちを詠むように、アラン様が言う。
「私が言ってるのは、ヴァロンのそれ以前…。夢の配達人の隠れ家に引き取られるまで、何処でどう過ごしてたか…知りたくない?」
「!……。」
それは、私やマスターでさえ…知らない事。
ヴァロンが母親に闇市場で売られる以前の事は、どれだけ調査員が調べても分からなかった事だった。
ヴァロン自身の記憶も欠けており、昔は治療の為に通院を勧めていたのだが効果は得られず…。その内に彼の精神状態の安定を第一に考えて、無理に過去を呼び起こすのは止めようと判断した。
それを…。
そのヴァロンの過去を、この男は本当に知っている?
今までの強請りとは違う核心を突いた言葉が気になり、私が振り返り視線を合わせると…。アラン様はニッと笑い、椅子から立ち上がってゆっくり歩み寄ってきた。