夢の言葉と陽だまりの天使(下)【夢の言葉続編③】

けれど、父は自分からは決して言わない。
自らが決めた定めのせいで、私が強制でマスターを継がなくてはいけない事への罪悪感からか、弱音なんて一度も聞いた事がなかった。

必要最低限の事以外は、私を自由にしてくれて…。
私のヴァロンへの想いに気付きながら、一切彼との関わりを断とうとはせずに…。そっとしておいてくれた。


「この件が落ち着いたら…。正式にマスターを引き継げるよう励みます。
ですから、この件に関しては私に一任して下さい。…お願いします!」

仕事机から立ち上がり、父の元へ歩み寄ると私は頭を下げた。

返事は、分かっている。


「……バカモン。
親を年寄り扱いするでないわ。」

思っていた通り、父はそう言いながら私の頭をくしゃくしゃと撫でてくれた。
ゆっくり顔を上げると、そこにあるのは優しい父の笑顔。
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