僕に、恋してみたら?


そのあと向かったのは、ショッピングモールからそう離れていない堤防だった。

入学した頃はここら一帯にしげる桜が綺麗に咲いていてピンク一色だったのに、今ではすっかり緑が繁る。


特にこの場所を選んだのに理由なんてない。なにも考えられず、無心で歩いてきたのがここだった。


「……茉帆?」


呼ばれて振り返る。

白系のいシャツにグレーのジャケットを羽織り、細身の黒いパンツを合わせている男の子が、自転車にまたがってこっちを見ている。


「え……、柳くん?」


高1の割には落ち着いた格好というか、学ラン姿と印象が大きく違うのもあって、随分と大人びて見える。

私服を見る機会はないので、とても新鮮なのだが……

どうしてここに?


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