僕に、恋してみたら?
わたし達の座っていた場所から見えていた、大きなマンションのエントランスをくぐる。
そこは、近くの橋を渡ったすぐそばにあり、到着までに要した時間はおよそ1、2分ほどだった。
オートロックをいともたやすくくぐった様子をみて確信した。
「……ここ、柳くんの家?」
「あぁ」
「案外ご近所さんだったんだ!」
「そういうこと。川を挟んで中学の校区は別れちまったみたいだけど」
「それじゃあ柳くん、西中?」
「だな」
「わたしは東中!」
「結構濡れちまったな」
柳くんの髪から、雨水が滴り落ちる。
「そうだね……はやく拭かなきゃ、柳くん風邪ひいちゃう……っくしゅん!!」
「こっちの台詞だ」
「夏間近といえど、侮れないね」
鳥肌がたった。
「……あがる?」
「え?」
「雨宿り。うちですれば」