僕に、恋してみたら?
*
柳くんの家は、マンションの最上階だった。
「お邪魔しますっ」
「待ってろ。今、タオル持ってくるから。ドライヤー使う?」
「ううん、タオルで大丈夫」
「そっか」
そうつぶやくと、柳くんはリビングにわたしを通して、姿を消した。
ふと、飾ってある賞状やトロフィーに目がいく。
「すごい……!」
これ全部、大会で優勝したときのものだ。
空手……やってたんだ。
「お待たせ。タオルと……それから、こっちは着替え」
手渡してくれたのは、上下黒のスウェットだった。
「俺のだからでかいけど。それ着てるよりはマシだろ」
「え、いいの?」
「向こうで着替えて来いよ。今着てるのは、そのへんに干しときゃ渇くかな? 必要なら乾燥機かけるけど」
「お、おきづかいなく! とりあえず、着替えてくるね」
「ん」