僕に、恋してみたら?


マンションから離れ、橋を渡り終えた頃に「桃惟に会いにきたのはね」とお姉ちゃんが話を切り出した。


「確かめたいことがあったからなの」

「……なにを確かめたかったの?」

「茉帆に〝もう先輩には会わない〟って言われて、わたし、ハッとした。桃惟と茉帆を引き裂くことが正しいか、わからなくなった」

「…………」

「桃惟があたしの親友を泣かせたこと、追求した」

「!」


妊娠させたっていう……。


「そしたらね、桃惟、身に覚えないって」

「え……」

「エリカのことは覚えてるけど、手を出したことないし、人工妊娠中絶の同意書にサインしたこともないって」


――!


「エリカはね、転校しちゃったの。連絡先も変わってて、連絡とれないんだ。エリカを疑いたくはない。疑いたくはないけど……。桃惟のこと、もう少し信じてみようと思う」

「…………」

「だって、茉帆の好きになった人だから」

そういって、切なげに笑うお姉ちゃん。


「でもね、茉帆。その他大勢のうちの一人になっちゃ駄目。あたしは、茉帆のこと大事にしてくれる男にしか、茉帆のこと任せたくない」

「……うん」

「だから、あいつが変なことしてないか、これからは目を配らせなきゃね」

「え?」

「近づくなとか言って……ごめん。これからは、茉帆の思うようにして」

「え……」

「泣かされるんじゃないわよ?」

「お姉ちゃん……」



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