僕に、恋してみたら?


わたしが表舞台には出るようなことは、まずない。


「私、結城さんがいいと思います」


――はい?


「あたしも!」
「賛成!」


……な、なんでぇ!?

わたしはどう考えても主役キャラじゃない。

アリスの迷い込んだ森でお茶会をしている森の住人A(ただし、お茶会には参加していない)か。

せいぜい女王様の使いであるトランプの兵の1人がいいとこだろう。

発表会など、過去の学校行事を思い返せば、裏方ばかり経験してきた。

指示通り大道具にペンキをもくもくと塗ったりとかの方が性に合っている。


「結城さん、やってみる気あります?」
と、実行委員。

クラスメイトの視線がわたしに突き刺さる。

柳くんが、心配そうにわたしを見ている。

「……いや、わたしは」「やりなよ!」

隣の席の吉田ユカリに、言葉をさえぎられた。


どうして、さっきからわたしが推薦されているの?

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