僕に、恋してみたら?
「なにかされたら、あたしらに言うんだよ?」
――?
話が見えない。なにかって?
誰に……?
「柳くんも、水上先輩もファンが多いから」
「仲良くしてたらやっかみくらうかもー」
「えぇっ……」
女の子同士のしがらみには、ときに恐ろしいことが起こるイメージがある。
校舎裏に呼び出されて『〇〇くんと仲良くしてんじゃないわよ!』みたいなことをいい迫られるとか。
イジメにまで発展するとか。
まぁ、そんなものは少女漫画でしか読んだことがないけれども。
「安心しなよ、そのときは跳ね飛ばすから」
「うちらがついてるよ」
「もう友達だもんねー」
「……ありがとう」
この3人が味方なのは心強すぎる。
「だから、ユカリと柳くんのこと応援してあげてね?」
「ちょ、サナ……!」
顔を赤らめ、照れるユカリ。
「ねぇ、茉帆。水上先輩のこと、紹介してよ」
と、アキナ。
「ただの先輩なんでしょ?」
「それは……」
「あんたバカ?」
ユカリがアキナに向かっていう。
「バカとはなによっ」
「茉帆は、先輩のこと……好きなんだよね」
――!
「そうなのぉ!?」驚くサナとアキナ。
「でしょ?」
「なんでユカリ、それ……」
「あの柳くんがアプローチかけて落ちないなんて、それくらいしか理由見当たらないから」
ユカリ……気づいてたんだ。
柳くんがわたしに仲良くしてくるの、柳くんに気持ちがあるからって……。
それでも、わたしとこうして仲良くしてくれてるんだ。
「えーっ、それじゃあ、うちら茉帆が先輩とうまくいくこと願ってる!」
「ユカリが柳くんとくっつけば万々歳だね」
「あんたち……、人ごとだからって楽しんでない?」
「えー」
「だって、2人には幸せになってもらいたいもん」
わたしは、浮かれていた。
優しい友達に出会えて。
だから、気づかなかった。
教室に戻ったときに、わたしたちを睨んでいた、1人の少女の存在に――。