僕に、恋してみたら?
「素敵だね!」
「ほんと? やったー」
夢があるなんて、ほんとに素敵。
わたしは、まだ卒業後のことは考えていない。
今、自分がどうしたいかもわかっていないのに。
成績は……悪くはない。
でも、ハッキリとした将来のビジョンなんて、なにも浮かんでこない。
こんなときにも……ふと思い出すのは、あの人のこと。
って、ダメだ。
今は劇の成功のために全力を尽くさなきゃ。
台詞、結構多いんだよね。台本を眺め、頭に叩き込む。
「ねぇ、茉帆」
と、ユリナ。
ユリナは当日、音響を担当することになったらしく、台本に、当日流す音楽や効果音のことを事細かに記していた。
「なに?」
「先輩と、ほんとのとこ、どこまでいってるの?」
「え……」
猫役のサナは、向こうの方で大道具を手伝っている。アキナは、別の衣装に取りかかっていて真剣だ。
わたしたちの話を聞いている人は、いない。
「……キス、した」