僕に、恋してみたら?
「〝アホか〟なんて、柳くん案外毒舌だよね」
「そう?」
「みんな言ってるよ。柳くんが最近ちょっと黒いって。ブラック柳だって」
「だれがブラック柳だ」
あ。
ユカリと柳くんが……良い雰囲気で話してる。
「わたし、ちょっと、行ってくる」
「トイレ? なら、あたしも――」
「ち、違うの」
2人から自然に離れたかったのに、ミスった。
「……あ、わかった。行ってらっしゃい!」
ガッツポーズをするユカリ。
多分、わたしが先輩のところに向かうとでも思っているのだろう。
いや、違うよ。これは柳くんとユカリにそのまま話しててもらいたいのであって……。
……でもまぁ、いいか。
わたしは、台本を手に持ち教室を出ると、屋上へ向かった。
先輩は、見に来てくれるだろうか。
わたしのクラスの演劇を。
衣装をまとった姿を。演技を。
それで、なにか感じてくれるだろうか。
ユカリは先輩とのことを応援してくれているけれど、わたしは先輩と恋人になれるとは思っていない。
それでも、少しは一歩踏み出すことのできたわたしの姿を――ひとめ見てもらえるならば嬉しい。
そんな気持ちで、台詞を読み上げた。