僕に、恋してみたら?


嫌な予感。

それは、3時間目の移動教室のとき。

忘れものをしたわたしは、ユカリたちに先に行ってと伝え、ひとり教室に戻った。


すると、もうすっかりひとけのなくなった教室に、女子が1人だけいた。

その子は、窓際に立って外を眺めていた。

なにを見ているかわからなかったけれど、景色でも眺めているのだろうと深くは考えずにいた。

わたしは実験に使う記録用紙を鞄から取り出し手にとった。

そのとき、窓際にいたその子が振り返った。

そして……不敵な笑みを浮かべたんだ。


ゾクッとしたのを覚えている。

今思い出しても、薄気味悪い。


もしあの子が、遠くを眺めていなかったとしたら。

地上を見下ろしていたとしたら。


そこになにかがあったとしたら――。



< 196 / 288 >

この作品をシェア

pagetop