僕に、恋してみたら?
どうしてあなたは、こんなタイミングで現れてしまうのだろう。
「そっか。それ、学祭で使う予定の衣装なんだ」
「……はい」
「それじゃ、着られないね」
「…………」
久しぶりに先輩とこうやって会うことができたのに、こんなところを見られてしまうなんて。
演劇を見に来て下さいと――笑顔でお願いできたら、どれだけよかっただろう。
「見せて」
「……?」
先輩に、衣装を手渡す。
「裾の2段フリルが、めちゃくちゃに切り裂かれてるね」
「……ここ、1番頑張ってくれてたんです」
先輩が、衣装を隅々まで確認する。その様子を黙って眺めるわたし。
「逆に、他の箇所は無事だよね。ボタンやレースは剥ぎ取られてるけど」
「…………」
時間の関係かな。
誰かに見付からないように、急いで破ったのかもしれない。
「茉帆ちゃん」
「はい……」
「これ作った子に会わせてもらえないかな」
――え?