僕に、恋してみたら?
先輩から「放課後迎えに行くから、教室にいてくれるかな」と頼まれたアキナとわたしは、二つ返事ではいと答えて先輩と別れた。
衣装は先輩に預けてある。
教室までの帰り道。
階段を降りながら、アキナがつぶやく。
「茉帆」
「ん?」
「先輩、優しいね」
「……うん。優しいよ」
「普通、こんなに優しくしてくれないよね。よっぽど茉帆を助けたかったんだね」
「わたしを?」
「ありがとう、茉帆。衣装見つけてくれて」
「……!」
そんな……わたしは、感謝されるようなことは、なにもしていない。
「ごめんね、アキナ」
「え?」
「アキナが作ってくれた、大切な衣装、守れなくて」
「謝んないで。茉帆はなにも悪くないもん」
「でも……悔しいよ。一生懸命作ってくれたのに」
「あのね、茉帆」
「……?」
「あたし、一から作り直すくらいのガッツはあるから!」
驚いた。
アキナの前向きさには。
「わたしも、できる限りのことはさせてね」