僕に、恋してみたら?
「これくらいで挫折してたら、仕事にできないと思うんだよね。ほら、仕事だと、鬼上司から『やりなおし!』なんて日常的にいわれそうじゃん」
「鬼上司……? そ、そうなのかな?」
「試練だと思って頑張るよ」
「アキナ……」
「それにね、茉帆。あの水上先輩のと放課後過ごせるんだよ? ワクワクするー!」
水上先輩のおかげで、アキナが笑ってくれている。
わたし1人の力じゃ、アキナの笑顔を守れなかった。
ただ、アキナは笑っているけれど、アキナが本当は泣きたいくらい傷ついていることには変わりない。
それを、わたしの前で見せないようにしているのだと思う。
アキナ……強いな。
強すぎるよ。
教室に戻ったアキナとわたしは――異変にすぐに気がついた。
皆の視線が、教卓の方に集中している。
そこにいるのは、ユカリ、サナ、柳くん、そして――あの子だ。
「やめろ、吉田」
「柳くんは、黙ってて!」
ユカリが今にもあの子に殴りかかろうとして、それを全力で柳くんが後ろから抑えて止めている状況。
「ちょ、ユカリ……!」慌てて駆け寄るアキナ。
続いてわたしもユカリに近付く。