僕に、恋してみたら?


「綾瀬さんがなにしたっていうの?」
アキナは混乱している。

「……っ、」


ユカリがそれ以上なにもいえないのは、衣装のことだからだろう。

ユカリは、気づいたのだと思う。綾瀬さんが衣装になにかしたことに。

どこまで把握しているかはわからないけれど、アキナにそれを伝えるのを躊躇(ためら)っている。

さっきまでのわたしと一緒だ。

言えば、アキナが傷つくから。


「ユカリ」

ユカリ、サナ、アキナ、柳くんがわたしを見る。


「もう、アキナは知ってるよ。……ううん、知ってるなんてもんじゃない。〝見た〟の。破られた……アリスの衣装」


わたしの言葉を聞いた、その場にいた全員が、驚きの表情を浮かべる。


「え……」
その瞬間ユカリの身体から力が抜けたのか、柳くんがユカリを離す。


「もしかしてあれ……綾瀬さんの仕業なの?」
アキナが、綾瀬さんを見下ろす。


「だったら?」
含み笑いをし、挑発的な態度をとる綾瀬さん。


「理由を教えてよ。本番まで3日だよ。みんなで頑張ってきたのに、なんであんなことしたの?」

アキナは落ち着いた口調で話す。目は、綾瀬さんをまっすぐ見ている。

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